気づいたら
ここは中国だった
歩いても歩いても
どこまで歩いても
ここは中国だった。
数時間とおくのほうへ進んだらもしかして
ぱっと日本だったりするのかしらと
思いながら
ずんずん進んで
どんどん遠くへ
いつまでたっても
中国だった。
見慣れた道と風景は
もう外国にいるなんて新鮮さはなく
右も左もただの日常で
同じ顔の中
私の顔も同じアジアで
だれひとり私に気づくことはない
知らない土地は
ここがいったいどこなのかと
奇妙な開放感と続く無限の感覚
夏から秋にかけての
湿った熱の中
お盆だったことにも気づかずに
夜中の上海を
ずんずん進むのだった
ここがどうして中国なのか
不思議に感じながら
もうすっかり息を吸うのにも慣れた
この土地に
少なくとも
来たそのときより確実に
愛着が沸いていることに
気付くまでに時間はかかったけれど
ずんずん進んで
どんどん遠くへ
タクシーのメーターがあとどのくらい上がれば
ここは中国でなくなるかな
ガソリンがなくなるのが先かな
なんて
ぼんやり狂ったあたまのなかで
知らない土地っていうものに
思いを馳せて
だからヒトは旅にでるのかしらなんて
馬鹿ばかしい質問を投げかけながら
知っている道が増え
地図とにらめっこせずとも
方角がわかるようになって
自分が今いる場所が把握できるようになり
そしたら街中が近所みたいになって
近所のおばちゃんと顔見知りになって
好きな場所が増えれば
もう
ここは私の住む町なんだろうと
ずんずん進んで
どんどん遠くへ
気付いたら
自分の部屋に到着した。
いいとこじゃん。上海。
こころがもどればすきがとつぜんめのまえに。
エキサイティング。