満月の夜はもしかすると
空から全員に素敵な夜を届けるのかもしれない
深夜2時
家に帰ると大好きな彼が言った
「綺麗な夜だったよほんとうに」
私も負けじと
「私も。今夜はとっても素敵だったよ。」
最近知り合った彼女に誘われて行った先は
まだひっそりとと佇むだけのうんとうんと素敵な場所
民家の間をぬけた奥には別世界が広がって
オープンしたての未完成なビストロはまだ誰も知らないはずなのに人でいっぱい
上海じゃないみたいな場所でフランス語に囲まれながらのワイン
ちゃんと美味しいまっさらなパンとアスパラガスとクロックムッシュ
濃い橙の黄身が流れるたまご
こういうのが、わたしのなによりのしあわせで
そして可愛いオーナーから
ワイルドベリーのお酒をプレゼントしてもらったあとは
日をまたぐまでおしゃべりを
ハニーがミエルにたまに換わる瞬間が耳に心地いい
そしておやすみと見送られたあとは
細い民家の間の道を来たときと同じように抜けるその先の空には
葉の陰から煌々と明るむくっきりと月
わたしと同じように
やっと満ちることができたようなくっきりと縁取られた月だった
そこでやっと大好きな彼からさっき届いたメールの意味を知る
「月と一緒にお茶してるよ」
あまりに綺麗な月だったから
私の代わりに月とお茶をしている彼をそのままにして
今夜は
私は月と一緒に時間をかけて歩いた。
彼の元へ帰るために。