こうしたひとりの醍醐味は
たくさんのひとのなかの自分と
たくさんのひとのなかでさがす君の顔
こうしたひとりの醍醐味は
ひとりでかえる帰り道と
目を閉じておもう君の顔
わたしが楽しい夜を過ごしたならば
君の楽しい夜を祈る
そしてまた
ふたりの夜に
ふたりぶんのひとりの夜を交換しあう
ねむるまでふたりぶんの体温を感じて
おきた時にふたりぶんの光を共有する
夢で会えるように
ひとりの夜を抱きしめる
何枚も何枚も手紙を書いて
ねむるひとりの夜
いとおしい君の夜と
君を思うわたしの
いとおしいひとりの夜
腐りかけの桃みたいな
君の甘い声が聞こえてくるような。
長い夜が明けるまで。