東京という土地は
むやみやたらとわたしを感傷的にさせて
訳もなく意味もわからぬまま
いつも後にする
会いたい人は山ほどいるはずなのに
東京という土地の人にまみれて
流されまいと歩く
慣れてしまえばそれまでなのかもしれない
わたしにはいつまでたっても東京だった
東京は多くの人にとって特別な地なのかもしれなくて
リリーフランキーも言ってたし
セカイのどの大都市よりも大都市で
どこよりも美しいようなゴミ箱のような
人で溢れ狂うその土地に最初に降り立ったのが
正解だったのか間違っていたのか
いつも通りどうでもいいことをぼんやり思い浮かべるここは東京
移動移動移動を繰り返し一体ここがどこなのか見失って
波のなかでゆらりゆらり水面を海底から覗いた
わたしの生まれ育った日の出ずる国
胸を張って自信を持って世界一美しいと言えるようになったのが
私が外国で暮らした証
ありきたりな
どこにでもありふれたそれが証
パスポートはあれよという間にスタンプで一杯になって
東京という印鑑は押さなくても出国できるのだろうか
そう不安になるほどに
見知らぬ土地東京
なじみ深くて、なじめない土地東京
私はどこへ。
ここは日本だったろうか。
私は、日本人だったろうか。
美しく音を立てずに沈む夕陽は
まぎれもなく
故郷の匂いがした。