いのち かぞく すきなもの

写真

12/07/2007

19才になる手前
クラブでナンパされて知り合った彼氏は
フォトグラファーだった

 

はじめて触ったカメラは
彼のニコンの当時のフラグシップ機

まだまだ銀塩が主流で
ずっしり重い本体のなかから
カシャンとシャッターが下りたその鈍い音が、

わたしの写真の道に引きずりこんだ。

 

 

おじさんに混じってカメラ屋に通いつめ
全部のカメラのシャッター音を
何度も何度も聞き比べて
ど素人がはじめて手にしたカメラは
どのプロのカメラマンが持ってるやつよりも

格好いいやつ

 

ごついチタンの固まりを
いつでも首にぶらさげて
何をするにもどこへいくにも
シャッターを切り続けて

 

何年かとり続けた写真の山は
私の頭の思い出用の箱に入りきらない分も
しっかりと時を止めてそこに残り

数え切れない程のアルバムに
嬉しいことも悲しいことも
次々に収められていった

 

 

思いだすのも辛いような写真は
ところどころアルバムから抜かれて
真っ白に消し去られようとした記憶を物語る

ばらばらに切り取られた時間軸が
体の熱を更に興奮状態へしていくようだった

 

 

押し入れの中をあさり
ネガからひっくりかえして
一枚一枚確認作業
何年も前の遙か彼方の思い出なんて
覚えているはずもなく
自分の経歴をそこに並べ立てるように

わたしは一枚の写真を探した

 

上手に撮ったやつは
あたまのなかにもよく残るもので

あの夕方の陽の景の色がよく出てる
あの橙色の記憶を見つけるために
写真をめくり続けた
めくってもめくっても出てこないアルバムを
諦めて

一枚ずつ蛍光灯に透かして探すネガフィルム
いつか大分整理して捨てた写真の山は
まだまだ山と呼べるくらいの量はあった

 

いきなりのできごとから
長い1日がおわったのに
体が興奮しきって

眠れない
疲れて頭がぼうっとして
大声で喋りすぎて
ぐったりするくらい笑ったような気がする

 

 

根気よくネガを最後のほうまで目を通したあたりで
どうでもいい学生時代の酔っぱらい写真にさしかかり
くだらない幸せに浸り笑う
きらきらきらきら転がるひかり

1、2、3、4、5、6、7段目の場所に
探していた写真のネガはあった

 

反転した色は当然
柔らかいひかりまでは見せてくれないけど
しっかり覚えているその写真

 

今日というさぶい日に
黒猫のクロとストーブの前で暖まる
ネガのなかでも同じようにしている
クロと一緒だ。

 

 

大好きな写真だった
やっぱりね。

 

 

 

やっぱりかっこいく撮れたやつだ。

 

ちょっと遺影には使えそうにはないけど
クロは今日気付いていただろうか。

 

 

 

 

 

じいさんが死んだことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

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