じいさんが死んだ。
おとといの夜さぶかったから
凍えたじいさんは
昨日の朝病院に運ばれて死んだ
あっといまに家に帰ってきたじいさんは
畳の部屋にもっかい眠って
うすっぺらい白い布団と
肩にドライアイスの塊
そんなんじゃさぶいから
胸に置かれた刀の上から厚い掛け布団をかけた
昨日の朝死んだじいさんは
昨日一日待ってみて
昨日一日「じいさん生き返ったか」と聞いてみたが
生き返らなかった
昨日の朝死んだじいさんの誕生日を
昨日の朝じいさんが死んではじめて知った
じいさんは私を日本に呼んでから死んだ
どうしてもわたしに逢いたかったらしい
昨日の朝死んだじいさんは
昨日の夜わたしの夢のなかまで会いに来た
今日もいっかい「じいさん生き返ったか」と聞いたが
まだだった
今日じいさんは最後の風呂に入ってひげを剃った
わたしはクロと一緒にじいさんにお湯をかけた
じいさんは死んでも格好よかった
ついた寝ぐせは絶対許さないだろうとおもって
葬儀屋のひとに頼んで、もういっかい整髪料をぬってもらった
そんなものじいさんのプライドがゆるすもんか
風呂にはいったら生き返るとおもったけど
じいさんはまだ生き返らない
ぴかぴかの箱の中にはいって
ドライアイスが冷たくて凍えたらどうしよう
じいさんはきれいな着物を着た
やっぱりじいさんはカッコイかった
今日も何回か「じいさん生き返ったか」と聞いてみたが
まだ生き返らない
明日はうんと綺麗にしてくから
髪もちゃんと巻いて
自慢の孫ぶりを発揮するから
だから
明日の夜までにね
じいさん
黒い服は
女のひとを一番際際まで美しく見せるらしいよ、
じいさん。