この肌は覚えている。
その腕が、どんな強さで優しさで、どのスピードで順序で、
この身体のりんかくを辿っていったのかを。
たぶんそう、
わたしは抱き合いたかった。
どこまでも深くて底なしの愛と一緒に
この身体を可愛がられていたから、
突然その手を失った私は、ともかく誰かの体温を探していたのだ。
きっとそう、
わたしは抱き合いたかった。
代わりに優しく撫でてくれる腕を、探していたのだ。
事故と変わらないキスやセックスは、サビシサを増すだけで
なんのありがたみも無かった。
わたしはそう、誰かに触れられたくて、
誰かに触れたくて、人の肌の生温かさを感じたかったのだ。
雨の続く皐月の隙間、大きすぎる晴れ間と光を受けた朝、
スコーンと脳天を突き抜けて、イってしまった。
セカイにまるごとめいっぱい
うんと優しく包まれて、この身を撫でられていたのだ。
ついこの間まで灰色だった世界に、
小さく顔を出していた芽が、知らぬ間にぐんぐん彩り
景色を100色に染めてゆくように、
わたしは次から次へと生まれ変わりゆく。
その、つまり、私は抱き合いたかったのだ。
でも今はわかる。
この小さい身体におさまりきらない
幸せの熱が、どんどんぐんぐん外に溢れ出てゆく。
なんでもない日常にぎゅっと締めつけられるよに守られて、
抱きしめることが、できるのだ。
この身体さえも。
いつだって。
大好きな人も。
なんなら世界まるごと。
ガラス越しに差し込む「愛」そのもの、
うわあ、
光とな。
(ちょっっと君たち、、、)
この肌は覚えている。
何処で、摂氏何度の時に、何月何日何時何分何秒の瞬間に
その風が頬を撫でたのかを。
繰り返すのだ。
deja vu を。
触れる空気が匂いが音が、
風が、頭のさきっぽからつま先まで
くすぐり撫でまわして
感じすぎてしまったわたしは、
それだけで
何度でも。