年下で、綺麗な顔をした、小柄な男の子だった。
まっすぐな目をして、”日本で、教えたいんだ”と言い放った彼は
まだ なんていうか とても未完成な繊細さを持ち合わせているにもかかわらず
例えば大乗仏教のお経の話を
興奮しながら話すときはもう既に教授の顔で
わたしは ああ こういう人が教える為に 生まれてきた人なんだろうと 思った
彼はレイバンの細長い四角のフレームの眼鏡が
本当によく似合っていて
私はその顔を始終追いかけずにはいられなかった
わたしの一番好きな
ベージュの麻のシャツを着ていて
クルクル話題を変えながら 私の興味を引き続ける様は
なんというかもはやお見事で
それが万人に受けるのかは実際わからなかったが
少なくとも私は この人に もう一度絶対会うと
勝手に 確信していた
その二年後に、その人の名字を名乗っているとはそのときは
想像もしなかったけれど。
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