突然の出来事に、そしてショックが大きすぎて、前後の会話は覚えていない。
「so, 僕の、彼女に、なるとかどうでしょう?」
そしてわたしは、腰掛けていた浅い階段からなだれ落ちる。
「きゅ、きゅうきゅうしゃ、よぶ?」びっくりした彼。
「きゅきゅ、きゅ、きゅう、きゅうううきゅうしゃ、呼んでください。」
腰が抜けて起きあがれなかった。
初めて出会った回を除いて3度目のデート、
インディアン食いに行こうと誘われて、いつも通りしっぽをふりながら出かけて
公園を歩きながらまた色んな話をした。
わたしは興奮して質問することも
自分の気持ちを表現することも止まらずにまた爆弾のように喋り続けて、彼はずっと耳を傾けていた。 基本的には聞く側で、自分の話をするのが苦手だと彼は言っていたが、わたしはそれでも彼のことをもっともっともっと知りたかったし、自分のことをもっともっともっと知ってもらいたくて次から次へと話はポンポン飛んで 疲れているのにわたしは
前回のデートで言ってくれた嬉しかったことの話やら
初めて話して彼が言ったことに感動した話やら
彼のことをどれほど尊敬しているかという話やら
鼻息を荒くして自分の好きなもの(この場合彼のこと)について語った。
わたしがあまりに素直にストレートにその好きなものについて話すものだから、
彼はたまに驚きながら、「僕はなんにもしてないよ。ただそのままでいるだけだよ」と
さらりと言う。
だからわたしは、”だからね、もしあなたがその、少しでも自分をアピールしようと頑張ってきていたら、きっと何も感じなかったとおもうの。そのありのままでありながらある意味美しくデザインされた佇まいを醸し出している、それについて私は衝撃を受けているんです”と
更に必死さに拍車をかけて、何が説得したいのかよくわからない具合だ。
彼はいつもわたしに大きな影響を与えて、
彼の存在や言動は、勉強の邪魔をされるどころか
前へすすむ追い風となりそして心強い支えとなっていた。
○
返事は結局、
いくつもの、めちゃくちゃなやりとりを経て、
「わたしを、彼女に、してくれますか?」と聞いた。
彼は間髪入れずに「はい」と答え、「….きき返したね?」とわたしを抱きしめた。
わたしはもう、夢の中で夢をみているくらい、現実から遠いところにいて
何もかもが良すぎて 涙がにじんだ。
彼のやわらかい唇が遂にわたしの口にゆっくり触れたとき、
わたしはもう幸せの絶頂にいて、言葉を失う。
「ああ、もう今夜、死んでもいいです。」と言ったら彼は慌てて「ええなんで?ジサツする?」と日本語で聞いた。わたしは笑い続けていて、
「死んでもいいくらい、幸せってことだよ。」と言うと、やさしいこと言うね、と
喜んでいた。
彼がわたしに触れてくれる間中ずっと、恥ずかしくてずっと
うつむいたままでいたのから、一度初めて彼の頬にキスをすると
目をぱちくりさせてニヤリ、「戦争、はじまったね?」とまた
またわたしを笑わせる。
彼の優しさには、なにひとつ無理がなくて、わたしは底なしの安心感を覚える。
そこには造り上げたものは見当たらない、最初から自然に存在しているような
遥か昔からつながりあっているような、自分の一部であるような感覚。
とてもたまに彼もわたしと同じように興奮したようすで
なにか彼の心を動かしたものについて語りだす
彼のグレーがかった青い瞳の内側の瞳孔が 2倍くらいに大きく膨らんだとき
わたしはじっとそのなかに吸い込まれていって
このまま彼の持つ宇宙観の中でずっと漂っていたいと願った
自分の表現する時にストレートすぎるあふれるような愛情を
何の躊躇もなくありのまま感謝し喜んでくれるひと そして同時に
彼の気持ちをめいっぱい素直に言葉に行動にあらわしてくれるひと
わたしたちは、日本語と英語 両方の 温度感やニュアンス そのなかで
上手に駆け回り遊ぶ
両方の言葉で 真面目なはなしも冗談も
交わすことの出来る全てを交わして
これから時間をかけてもっともっとお互いのことを知ってゆけたら
わたしがいつまでも夢うつつで、「しあわせの絶頂すぎて….どうしよう」と言えば
遠い目としみじみした調子で、絶妙なタイミングで飛び出す日本語が
「絶頂かぁ….あとは、下山するだけだね…..」
言葉遊びの大好きなふたりはいつまでも延々とこんな調子で
笑い転げていたけれど
わたしが慌てて 下山なんて言わないで~と泣きつくと、
「じゃあ一緒に山を下りて上げよう」と彼は言った。
下山する途中で 道に迷ったり もしかしたら道がなくなってしまうかも
しれないけれど とにかくはまあ
手を繋いでポテポテ歩いてゆこうと
わたしはぺこり
「そういうわけで、よろしくお願いします」と頭をさげた。
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