そしてわたしは、そのケールチップを一口食べたのち、
ようやく重い腰をあげて、ディハイドレーターを買うことを決める。
わたしは
気づいたら
もうニューヨークが一番好きで
住み慣れたその街は 毎年同じ季節に同じ顔を見せる
12月は、いつでも特別
景色を彩る小さな電球の粒が
やっと例年どおりの温度へたどり着いた 寒さとピタリ 釣り合って
たくさんの記憶を揺さぶり起こす
わたしはその 乾燥させたケールをあっという間にたいらげて
自分にひつような最小限のものたちは
どんなものだったろうと 思い出していた
ディハイドレーターとvita-mix が親友で
生のナッツやカカオ 果物と野菜に囲まれた日々
わたしの暮らしから
そういうものが姿を消して約1年
代わりに パートナーに辞書と 分厚いテキストブックに
本とノートとペンに触れる日々は 大きく変化して とても幸せだけれども
乾いた あの 種や実や香草とスパイスの匂いへの恋しい気持ちを
わたしは隠し抑え続けてきた
年が明け
またこの街で生活を始めたら
まずディハイドレーターを買って
そのあと春が来たらvita-mixを買おう
わたしはそして
もっと 自分がただ淡々と暮らすことに
とてつもない心の平安を感じるはずだ
その横に
誰かがいてくれる日がいつかくるといい
ひとり黙々と新しいことを始めた春先も
にわかに揺れた夏前も 聖なる沈黙を初めて経験した初夏も
独りきりで過ごした真夏も 恋人に出会った秋の入り口も
何だかずっとずっと昔の出来事のようで
不思議だ
この街の光は
わたしを優しく包む
師走な情緒とはまた違う、クリスマスの月
真夏の木漏れ日のなかで微睡むような
師走のお湯を沸かしたときの湯気が与えるような
そんなほっとしたきもちで
いつでもありますように