そして怒濤のごとく過ぎ去る日々を 無理矢理ぎゅうぎゅうに押し込んで
何とかギリギリ全てを片付けた私は
12月末の早朝 キーンと刺すような年末らしい寒さの中
恋人に見送られ
空港へと向かった
その朝アパートから出たとき 進行方向を向いていたわたしの顔の後ろ側に
日が昇る瞬間の 濃縮されたオレンジと藍色のグラデーションを
彼は指差して 私は振り向いて
そのビルとビルの谷間に見える 東の夜明け
なんて 神聖な空気に包まれているんだろうと 思った
朝から荷造りの仕上げと 二人分のおにぎりを握る忙しいわたしに
「まいちゃん、かばんのポッケにおこづかい入れておくから、それでお茶とか買いなさいね」
と言っていた恋人
チョコレートをおやつに入れながら
”ちょっこれーと ちょっこれーと チョコレイト は め い じ” と歌うわたし
明治製菓の「明治」という名前に くいついてくるアメリカ人
しばらくして 意気揚々と戻ってくると 「まいちゃんっ 明治はもともとは違う会社の名前だったみたいだっ」
と早朝から明治製菓の沿革について説明していた
フライトの直前でも 明治製菓の ”明治” をウィキペディアする 相変わらずの恋人
わたしはバス停にて見送られ
何度もキスをして 行ってきます!行ってきます!と興奮したままで
そして空港までのバスのなか 数枚のお札の間に
日本語と英語の混じった小さな手紙を見つける
無事にことしは 幕を閉じようとしていて
そして来年はじきに始まろうとしていて
何もかもが尊い、出発の前の静寂