外国での暮らし

Your Love Is My Drug

06/05/2012

辞めた方がいいと、わかっているのに、どうしても、やめられないことが、ひとつやふたつ、だれにでもあるかもしれない。

掻いたら傷が広がり、血が流れることが、わかっているのに、
気付いたら爪を立てている。
わたしが主に、コントロール不能な耽溺に長い間苦しんだのは、紛れもない「恋愛」で過去に何度も繰り返した愚かな ”誰かを愛する” という錯覚のなかで今でも忘れられない記憶が、ほんの少しだけある。
欲しくて欲しくてたまらなくて、でも、手に入らなかったものだけが
その記憶として残り
完全に色掛かった眼鏡を通してのイメージのみが、この心の奥底にこびりついてきっとそれはこの先一生色あせて行くことは無い。
いつか、恋に落ち、その恋が自分の身をズタズタに切り裂いていくことを知りながら
浅はかなその激情の中で藻掻く。そして溺れて死んでしまう前に自ら断ち切ったそんな恋は、わたしにとって、断ち切ることをしたからこそ
この私が持てる最も豊かな感情のなかでもクライマックスの極致のみを切り取り
そして箱のなかに閉まってそっと覗く存在として この身に残すことが出来たのだ
誰かとパートナーシップを結び、恋は、いつからか自らの生活の現実的な一部となり、
そして、穏やかな幸せに変わってゆく。
そのなかで、忘れてしまうことは、たくさんあるように思う。
あのとき、全てが壊れても、それでもいいと本気で願ったその絵空事のなか、
全身に毒が駆け巡っていくのを感じる暴力的な衝動は何にも勝る、強いエネルギーの源そのものでもある。
手に入ることはないと、わかっていながら思い続けるその恋は、
どんなハッピーエンドにも勝るヒリヒリした中毒性と共に、
手に入ることがないからこそ与えてくれる自虐的な充足感がある。
ある一線を超えたら決して幸せになれないことをお互い無意識に了解している相手と、そのギリギリのラインの上でする試合。
相手の性質を知り尽くした上で確かな線の向こうに一歩でも、
踏み込んだら自分どころか相手まで瞬く間に
浸蝕され最後には滅び、取り返しがつかぬことを知っていながらも
殴られたような強い衝動と加速する鼓動を止めることはできないのだ。
そして不完全に終わるからこそ、錯覚に陥ったままの元の形がそのまま残り、
わたしはそれが、幻覚以外の何者でもないとよくわかっていながらも、
そのときのグロテスクで艶やかな色のまましっかりと息の根を止めて飾る。
ひとの命も関係も、生ものだから、最も美しいところで
その生をエイッと奪ってしまうことで、永遠の無機質な美を得る残酷な方法かもしれない。
ーーーーーー
ある匂いを嗅ぐたびに、ある音を耳にするたびに、ある季節が訪れるたびに
呼び起こされるその深く深く眠ったメモリーの断片。
たまに、箱をの鍵を開けて、脱色されて霞んだ”今”に、その鮮やかな記憶から
一滴二滴ほど毒を借りてきてそして
もう一度”今”が彩度を取り戻してゆくならば、
わたしはその恋は、それだけで最高に価値のあるものだと思う。
小説や映画の中の疑似体験ではなく、実際にこの身体全てで感じきった
わたしの尊くて馬鹿げた恋のドラッグな記憶は、
普段絶対に聞かないであろう下俗で女子高生的な
アメリカンポップシンガーの曲とともに、こうして生き続けている。

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