森さんがいなくなってから、どのひとにお願いしても森さんより上手なひとはいなかったから、いつもあんまり期待してなかったシャンプー
でもこの前、あまりにも続けて酷かったから、店長にお願いして上手なひとをあてがってほしい、と伝えてた。
森さんの話もそのときにしたら、やっぱり森さんは、どの店舗でも「シャンプーが神」だと有名だったそうだ。
わたしは森さんのシャンプーのファンだった。スキルだけじゃなくて、気の使い方やたたずまいや距離感や、笑顔や声のかけ方どれをとっても彼女は素敵で、何回か、森さんがカットやカラーをすることは無いのか聞いて、シャンプー係ではもったいないといつも思っていて、そのうち店を辞めるんだ、という話を聞いて彼女は静かにいなくなった。
自分でも、研究したりするために、わざわざ他のお店にお客さんとして行って、シャンプーをしてもらったりしてると聞いたとき、その腕は、たまたま偶然持っているセンスではなくて、彼女が自分の手で得たものなんだと心から尊敬して、ますますファンになった。
こんなふうに自分の仕事と向き合える人。憧れるし、自分もそんな風になりたいと思ったし、美容院に毎回いくときの楽しみが、森さんに頭を触ってもらうことだったわたし。
今日は前回伝えたおかげで、上手な子をあてがってもらい、丁寧にやってねと注釈まで入れてもらっていたみたいで、それがとても伝わってきた。安心して頭を委ねることができた幸せな美容院の時間。
贅沢で、ありがたくて、こんなふうに自分の髪の毛を洗ってくれたり乾かしてくれたりするたびにわたしは中世のお姫様になったような気持ちになって、ありがとう。と思う。
森さんは、そのあとどこかのエステかサロンに入ったみたいだった。森さんの弟が、家でもマッサージやシャンプーの練習を家族にやっていて、本当に努力家だったと知って、久しぶりに今日、ますます森さんに会いたくなった。
わたしは、ひとの髪の毛を丁寧に丁寧にブラシをいれて乾かしたり、ひとの頭を持ち上げて丁寧に丁寧に洗って声をかけてマッサージをしたり、絶対にそんなことができないから
その代わりに、自分にできることは一生懸命しようといつも思う。
いろんな生き方のなかで、いろんなしごとをしているひとたちを
みんな尊敬するようになった最近。
世界があるから、わたしは幸せなのだ。
森さんにまた会えたら、色んな話をしたいな。
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