彦根にいった。
帰りのくるまのなかで、これが最後なんだとそう思った。
たおくんに、もう２度と、こうやってふたりで出かけることはできないかもしれない。
もう２度と、無理して、できないことを、こうしてやっては苦しむことを終わりにすると決めて、運転したら涙がでた。
たおくんに、これが最後の旅行だとおもう。悲しいけど、そう伝えた。
たおくんは、そんなのいやだなってそう言ったけど、でも多分
いろいろなことを察知して、わかったんだと思う。
たおくん、彦根でなにが一番、うれしかった？
そうきいたら、ひこにゃんをママが買ってくれたことと言った。
そう、わたしは、いつもはひこにゃんの大きい人形なんか買わない。前にきた時も、ほしいって言ったけど、だめって言った。
でも今回は、なんかもう、たおくんがほしいものを、買うのが自然だとそう思ったんだ。
わたしが嫌だから決めるんじゃなくて
たおくんの願いを叶えるってこと。
わたしは、自分が、たおくんが、一番それが嬉しかったと言ったことを
自分が、この手で叶えてあげることができて
それが、ただ嬉しかった。
泣きながら、たおくん、ひこにゃん買ってって言ってくれてありがとう
そう言って、どれくらいそれが嬉しいかを感じた。
たおくんが、何回も
ママ、ひこにゃんを買ってくれてありがとうって言うから
そんなこと、言わなくていいよって
きっとたおくんはそれが、本当に嬉しかったんだとおもう
わたしたちの
最後の旅行
できないことが多すぎて
もてないものが多すぎて
くるしくて
悲しかった
でも、たおくんがいてくれる
それだけでいい
会いたいと言ってくれる人よりも
会いにきてくれるひとを大事にしたいと心から思った
そばにいたいよと言ってくれる人よりも
そばにいてくれるひとを
たおくんのように
ただ、一緒に過ごしてくれるひとを
大切にしたいと
わたしたちはいつも、幸せだったよね？
ひこにゃんを買って
ほんとうによかった
自分がもう、死んでしまうと何度も思った後から
わたしは変わった。
大嫌いだったガチャガチャを
買ってあげるようになったし
１５００円の
おおきなひこにゃんも買ってあげるようになったら
どれくらいわたしたちが愛に溢れてて
どれくらい豊かなのかがわかる
しあわせなクリスマスイブ
ありがとう、みんな
