かぞく 外国での暮らし

ちっぽけなわたしたち

05/11/2009

「貴様の喋る日本語の”声”が憎たらしい」と
遂に吐き捨てた後訪れたのは彼の実家、バーモント

この週末彼とほとんど大体喧嘩をしていた、ベッドの上でさえも。
顔も見たくなく、1人になりたくてひたすら歩く。
気持は整理されない。雨音に濡れて歩く、ひたすら歩く。
来週からまたイスラエルに行くらしい。もう何を聞いても驚かない。二度と帰ってくるな。
痴話げんかならぬ最早兄弟ゲンカに近いわたしたちは、
何ひとつかわらない。話す内容は、進化するどころか最初からおんなじで
上海のアパートで、初めて喧嘩したトキのはなしをされて
わたしはよく覚えておらず知らぬが仏だったのに
思い出すにつれて結局よけいに腹が立つだけだった。
結局のところ、近い距離だからこそ腹が立つわけだが、こっちが真剣にパンチをくらわしても
あの生温い緊張感のなさが私を益々イライラさせて、でも次の瞬間にまた許している自分に
ほとほと呆れるつつ、そんな関係はきっとこれからもいつまでも変わらない気がする。

自然の中の暗闇というのは、想像しているよりももっともっと深い闇であることを
今回の帰郷で知る。

皆が寝静まったあと何度目かの仲直りをして外に出る。
星空と、真っ暗な雲と、風の音。
大きすぎる闇と偉大さに、畏れおののく。
怖かった。恐怖と、感動が入り交じった感情、あまり感じたことはない。

わたしは天を仰ぎ、さっきまで彼に蹴りを入れたいよな怒りも忘れてしまい
「すごいね!すごいね!!」と日本語で叫んでいた。
押しつぶされるかと思ったのだ。星に。宇宙に。天に。
そのままそっくり飲込まれたわたしは、なんて自分も彼も小さいんだろうと
素直に思って、全て何もかもがばかばかしく思えた。

バーモントの深い夜の星空に助け舟を出されたわたしたちは、まあ何となく部屋に戻り
何となく眠り、いつも通り起きて駅までいつも通りぎりぎりの時間で到着し、
車から飛び降り走ったら私はいきなり漫画みたいに転んで擦りむき、真剣に泣いた。
そして別れ際、抱きしめてキスをして、帰ってゆくのだ。

きっとまた、遠く離れてとりあえずどこかで生きていて、人に出会い、恋をして、
成長したような気になって、次に出会ったならまた変わらない下らないことで喧嘩をする。

髪が短くなったり、長くなったり、変わることはそのくらい。
あとはちょっと腹が出てくるくらいで。

いってらっしゃい。
またどこかで会いましょう、
願わくば、
バーモントの満天の星空の下で。

 

 

 

 

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