電気とかガスとかが日常の現代に生まれ落ちて31年。 まもなく、小さな次世代が同じく生まれ落ちようとしている。 そんな瞬間に、わたしは「火」と共に生きるという体験をしている。 朝5時に起きて、ぐっと冷え込んだ秋冬の5月、ニュージーランド。 まずは、「火」を起こすことから、全てがはじまる。 湯を沸かすも、身体をあたためるも、おおむかし、ひとは、「火」でおこなっていた。 そんなあたりまえのことを、実際に […]…
”ごちそうさま。” という自分のノドから発せられた音が、 部屋全体に響いた。 この部屋で、この台所で火をかけて何かをこしらえ、 そして食べる、最後の食事。 空は暗く、一日中清々しい夏日の後の、 静か、でもないいつもの夕暮れ。 ひとが、生まれかわるその前というのは、 ほんとうに死んだような感じがするのだなあと その皿を前に 一切食欲がわかないまま ただ口にそ […]…
これから始まる次のチャプターを目の前にして、 わたしのアメリカでの生活の皮切りとなった場所バーモントにて 最後の日々を、当時を辿るようにして過ごしている。 あのときスリングの中ですやすやと眠っていた生後6ヶ月のテルーラは、 もう小学校へ通う大きいお姉さんで、泥だらけで乱暴な兄と弟の間で 二人よりもずっともっと野性的に 今もかわらず掘りたてのにんじん片手に 文字通り裸足で野原を駆け回る あのときひと […]…